【前編】Oscar Mestre(オスカル・メストレ)訪問記
― バルセロナからアリカンテ北部シャロ村へ、土壌に向き合う若き造り手 ―
2026年2月、Barcelona Wine Week終了後、スペイン・アリカンテ北部の山間の村Xaló(シャロ)を訪れ、若き生産者オスカル・メストレの畑とワイナリーを訪問しました。
土着品種Giró(ジロ)へのこだわり、除草剤を使用しない畑管理、そして標高700〜800mの冷涼な区画。
現地で実際に見て感じた、シャロ村のテロワールとオスカルのワイン造りの哲学を、前後編に分けてレポートします。
バルセロナからアリカンテ北部の村シャロへ、5時間のドライブ
Barcelona Wine Week最終日の夕方、オスカルの車でバルセロナを出発。
目的地は、彼のワイナリーがあるアリカンテ県の小さな村、Xaló(シャロ)。
道中約5時間のドライブ、目的地のシャロ村に入ったところで遅めのディナー(18時にバルセロナを出発して、シャロ村に着いた頃にはもうすでに23時を回っていました)に連れて行ってくれたのは、オスカルが「一番好き」と話す寿司ビュッフェのレストランでした。
ビュッフェなので、もちろん日本の寿司とは少し(?)違います。
チーズが乗っていたり、見慣れないソースがかかっていたりと思わず笑ってしまう組み合わせも。
オスカルはまだ日本を訪れたことがなく、
「いつか本物の寿司を食べてみたい」と話していたのが印象的でした。

右:オスカル、左:醸造家仲間のオリオル、彼もアリカンテでワイン造りを始めたばかりの若手生産者
自転車トレーニングの聖地、Xaló(シャロ)
翌朝は畑訪問からスタート。
ワイナリー周辺の区画を巡りながら、オスカルが教えてくれたのは、この時期のXalóには多くのロードサイクリストが訪れるということ。
温暖な気候と起伏に富んだ地形から、プロチームのトレーニング地としても知られており、村の宿泊施設は連日満室になるそうです。
さらにハイキング目的の観光客も多く、人口約3,000人の静かな村ながら、山の観光地としての一面も持っています。
FENAVINでの出会いから現在へ
オスカルと初めて会ったのは、2023年5月のFENAVIN(2年に1度スペインのシウダ・レアルで開催されるワイン展示会)でした。
当時はまだプロジェクト初期段階で、父親のワイナリー設備を借りながら、自身のスタイルを模索している時期。(私も、このSARA CORPORATIONを設立する前の準備段階で、取引ワイナリーを探しにスペインへ渡った時でした。)
FENAVIN後に初めて現地を訪問した際は、バケツをひっくり返したような大雨で畑を見ることができませんでした。
今回は打って変わっての快晴。
ようやく彼の畑をしっかりと歩いて見ることができました。
現在オスカルは、無理に拡大するのではなく、納得できる区画を少しずつ取得しながら、着実に畑を増やしています。


樹齢80年以上の黒ブドウ品種Giró(ジロ)。1本の樹から、わずか4~5房しか実ができない。
土壌と畑管理
このエリアは、かつて海底だった地層が隆起して形成されたと言われており、山脈が多く複雑な地形が特徴です。
土壌は主に:
・鉄分を含む粘土質
・砂質土壌
が混在しています。
オスカルの畑では除草剤・殺虫剤を一切使用していません。
施す堆肥も、環境認証を取得した隣接の畜産農家からのもののみ。
さらに醸造施設の電力は太陽光による自家発電、水は井戸水を使用しています。
小道を挟んだ向かいの畑(除草剤使用)との違いは視覚的にも非常に分かりやすく、土壌表面の生命感の差が強く印象に残りました。

オスカルの畑。一面に”ワサビ・バレンシアーノ”や植物が生えています。

小道を挟んで向かいの除草剤を使った別生産者の畑。草花は枯れて茶色い。
畑に自生するワサビ・バレンシアーノ
畑で見せてもらったのが、「ワサビ・バレンシアーノ」と呼ばれる植物。
茎を少しかじると、確かにワサビのような清涼感ある辛味があります。
地元レストランで料理のアクセントに使われることもあるそうです。
オスカルは、この植物をすり潰して畑に散布することもあるとのこと。
彼のワインに感じる後味の清涼感について尋ねると、
「もしかしたら、この植物の影響もあるかもしれないね」
と笑顔で話していました。

"ワサビ・バレンシアーノ"(=バレンシア産わさび)
土着品種Giró(ジロ)へのこだわり
オスカルが特に大切にしているのが、この地域の土着品種です。
モスカテル・デ・アレハンドリアは、かつてアリカンテ周辺で干しブドウ産業を支えてきた重要な品種ですが、彼の視点はさらに過去を向いています。
フィロキセラ以降に広がった品種ではなく、
それ以前からこの地に根付いていた品種――
それがGiró(ジロ)です。(白ブドウは、Giró Blanco ジロ・ブランコ)
黒ブドウのGiróはDNA的にはガルナッチャ系統とされていますが、長い年月この地に適応してきた背景を考えると、単純にガルナッチャの一変種と捉えるのは少し違うのではないか、と彼は言います。
感覚的には、テンプラニーリョとティンタ・デ・トロの関係性に近いかもしれません。
▶ 後編へ続く
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